マイコン導入
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そうこうしているうちに、社長からマイコン[1]を導入したいから、機種を選んでほしいとのリクエストが来る。話を聞いてみると、アンプの歪み率特性を見るのにスペアナが欲しいが、高いし、めったに使わないから、代わりにマイコンでやりたいらしい。
まあ、何らかの方法でデジタル化すれば、あとはベーシック[2]でもできなくはない。「FFTの計算に一晩位かかるかも」と言ったのだが、「かまわないから、相談に乗ってくれ」とのこと。
この頃市販されていた機種は、MZ-80K, PET, Apple II といったところか。当時、輸入品はとても割高で食指が動かなかったし、MZ-80K
は、起動に時間がかかる(カセットテープ起動)ため却下。他にTK-80BS (COMPO BS/80) というのもあったが、あまり完成度が高くない。どうにも良い選択肢が見つからない中、NECが新型機を出すという情報を思い出した。当時の言葉でいうとペーパーマシン。
8bit Personal Computer PC-8001、1979年9月発売。スイッチオンで、すぐにベーシックが立ち上がる、キーボード一体型とのこと。実物も見ないまま、機種はこれに決定。問題は、前人気がすごく、予約してもすぐには手に入りそうにないということ。ところが、私の心配をよそに、発売日の次の出勤日には、私の買い物リスト通り、本体、カラーモニタ、16KB増設メモリが揃えられていた。どうやら社長の顔の広さを甘く見ていたようだ。
マイコンは揃ったものの、FFT でスペアナもどきを作る話は、どこかに行ってしまった。
オーディオ信号をデジタル化する部分は社長が何とかすることになっていて、そのためにPC-8012 I/Oユニットも買ってあったのだが、それで何か作ろうという気配はない。
とりあえず何かに使おうということで、スピーカーボックスの設計支援用のプログラムを作ることになった。スピーカーボックスのサイズを入れると、ボックス内の定在波の状況がカラーグラフィックで表示されるというもの。元の計算式は社長がどこかから手に入れてきたものだが、本当にこれで良い音のボックスが作れるかというと、少々怪しい。
プログラムを作っていると、社長がいろいろ質問してくる。このあたりから、社長がはまり出したようだ。私が出勤すると、見よう見まねで作った簡単なプログラムが置いてあって、それに対するコメントを求められる。これは整数型にした方が速い、同じ処理を何回もするときは、ループにするかサブルーチンにした方が...などなど。
この頃は、ほとんどマイコン家庭教師のような状態になっていた。「ダメダメ、そんなんじゃ無限ループになっちゃう」、「こんなの桁落ちしてまともに動かないよ」など、社長に偉そうなことをどれだけ言ったことか。でも、社長は常に冷静で、若造の言葉も真剣に聞いていた。
[1] マイコン:今でいうパソコン。パソコンとかPCとかいう言葉は定着していなかった。
[2] ベーシック:会話式で初心者にはとっつきやすいが、いわゆるきれいな言語ではない。
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